和傘職人 山田ひろみ KANAZAWA EXPERT #8

「KANAZAWA EXPERT」は、昔からの文化が息づく街・金沢で、伝統の技や金沢の歴史・文化を訪れる人たちに発信している作家や職人、その道のプロフェッショナルたちをご紹介する企画です。金沢を熟知する案内人でもある方々に、ここでしかできない体験や金沢の楽しみ方をお聞きします。


今回は骨組みから和紙の貼り付け、仕上げに至るまで全ての工程を師匠の田中さんと二人で行い、美しい和傘を手掛ける「和傘・水引 工房 明兎(みんと)」の山田ひろみさんに話をお聞きしました。

金沢の気候風土に耐える傘

  • 雨雪に耐える傘にするため油を塗る「油引き」作業

  • 傘を開くと見える内側の艶やかな色糸をかがる『かがり』の作業

  • 補強のためにおこなう『かがり』。傘をさす人のために艶やかにかがる先人の知恵

  • 和傘の材料である竹骨は、つなぐ前に面取りや磨きをかける  ※写真に写る真ん中の糸巻きのようにみえるのはうづくりと言って竹骨を磨くものです

  • 「ろくろ」と呼ばれる傘骨の先端の部材。和傘の天井と手元にある開閉のために重要なものです

  • 『つなぎ』 親骨を和傘の天井部分、天ろくろにつなぐ

  • 『つなぎ』 中節のつなぎ

  • 『つなぎ』 親骨の中節に、小骨の小割にした部分をつなぐ

  • 『傘干し』 防水のために施した油を乾かすために軒先につるして干す

  • 全国各地の祭りで使用される和傘の製造や修復も行う。

和傘の魅力や特徴について教えてください。

今となっては希少になった和傘。かつては金沢にも100軒以上の和傘屋さんがあったと言われています。和傘の産地としては岐阜や京都が有名ですが、金沢は一年を通して雨が多く、冬は湿気を含んだ重たい雪が降ることから、この地の気候風土に耐えられるよう一般的な和傘と比べて頑丈に作られていました。


和傘の製作には多くの工程があり、以前は各工程をそれぞれの職人が分業して行ってきました。「明兎」では基礎となる竹骨・ろくろといった部品を仕入れて、その後の工程はすべて師匠と二人で行っており、和傘を一つ完成するのに3、4ヶ月の期間をかけています。和傘は丈夫で、昔は「半世紀持つ」とも言われていました。使い捨てが当たり前の世の中になっていますが、モノを大切に使ったり、それ自体の美しさを愛でるような文化を伝えていきたいですね。


山田さんはどのようなきっかけで和傘の世界へ入られたのでしょうか。

もともとものづくりに興味があり、子どもが生まれたことがきっかけで一緒にさまざまな体験イベントに参加するなかで木工と出会い、木工塾へ通っていました。あるとき木工の先生から勧められて、金沢和傘の後継者を育成する「金沢和傘 伝承研究会」の立ち上げに携わることに。和傘の主要な産地である岐阜県まで足を運び、道具を見て学ぶところから始まりました。その後、定期的に岐阜県の師匠の元へ通うなどして2012年に独立しました。現在はオーダーメードの和傘製作をはじめ、体験の受け入れ、「百万石まつり」や県外のお祭りなどで使われる和傘の修復などを行っています。

世界に一つのオリジナル和傘を作る喜び

  • 明兎の和傘

  • 「かがり」体験

  • 明兎の和日傘

  • 金沢湯涌江戸村での『和傘の花』、和傘製作体験をしていただいた和傘も展示

  • 「かがり」に使用する木綿糸

  • 和傘製作体験 『張り』

  • 明兎のミニ傘

  • 山田さんの工房「明兎」での体験の様子

  • 金沢湯涌江戸村では村内をさして歩ける和傘を常設しております

  • 和傘製作体験 小学生も体験できます

和傘製作講座の魅力やポイントを教えてください。


「金沢湯涌江戸村」で講座を開いていたところ、参加者から「もっと学びたい」という要望があり、2020年頃から自宅工房での講座を始めました。講座の受け入れを始めたのは「和傘の文化を伝承しなくてはいけない」という使命感から。マンツーマンなので、和傘や修復方法などについてお話しながら作業を進めています。参加者の方が一番喜ばれるのが、全4回の工程を終えてオリジナルの傘が仕上がったときです。嬉しそうな表情を見ると、こちらも嬉しくなりますね。


講座では多岐にわたる和傘製作の工程のうち、①ろくろと呼ばれる部品に竹骨をつなぐ「つなぎ」②竹骨に和紙を張る「張り」③前回和紙を張った傘をたたむ「たたみ」④傘の内側に補強兼装飾用の糸を施す「千鳥かけ」の主な工程を4回にわけて行います。傘の大きさをはじめ、和紙の色やワンポイントデザイン(花や動物、虫など)もご自身で選ぶことができるほか、「千鳥かけ」の糸も好きな色にすることができるので、自分だけのお気に入りの和傘が作れますよ。


和傘の風合いは見る角度や条件によって様変わりします。自然光に当たったときの透け感や、実際に傘を差したときに内側から見るときなど、さまざまな表情を見せる和傘を楽しんでいただければと思います。雨音の情緒も格別なんですよ。

《能登支援》和傘製作講座(4回コース)
【体験料の一部を能登支援に寄付】あなただけの大切なオリジナル和傘を作ってみませんか?職人が丁寧に手ほどきします!
詳細ページへ
《能登支援》水引ちょこっと体験(1時間半~)
【体験料の一部を能登支援に寄付】犀川のほとり和傘に囲まれた工房で水引体験しませんか
詳細ページへ

城下町だけでなく、「田舎」な部分も楽しんで

金沢の魅力やおすすめスポットを教えてください。

金沢市中心部から車を30分ほど走らせたところにある、江戸時代の加賀藩を中心とする建築物を保存・展示している「金沢湯涌江戸村」がおすすめです。湯涌温泉エリアは「金沢の奥座敷」呼ばれており、豊かな自然や田園風景が広がっていて、田舎を訪れたようにゆっくりとした時間を楽しめます。「金沢湯涌江戸村」では、和傘製作を「ひとはり」(一針、一張り、一針)だけ楽しめる無料の体験も行っています。こちらの体験は月に一度だけですが、普段は村内を和傘をさして歩くことができ、また和傘をさしての記念撮影もできます。ぜひ遊びにきてください。


山田さんにとって金沢とは何でしょうか。

私の「ふるさと」ですね。小学校高学年まで県外で育ったので、今でも金沢はおじいちゃんやおばあちゃんに会いに行くところ、という感覚が残っています。和傘の魅力を発信するため、仕事で県外へ行くことも多いですが、やっぱり金沢に戻ってくるとほっとするんです。


和傘・水引 工房 明兎 山田ひろみさん

金沢市出身。もともとものづくりに興味があり、木工教室へ通っていたところ、縁があって「金沢和傘 伝承研究会」の立ち上げに携わる。その後、和傘の主要な産地である岐阜県で和傘を学び、2012年に独立。現在はオーダーメードの和傘製作や体験の受け入れのほか、全国各地の祭りで使用する和傘の修復なども手掛ける。

紹介したスポットをマップで見る

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  • 金沢湯涌江戸村
  • 和傘・水引 工房 明兎
  • 《能登支援》水引ちょこっと体験(1時間半~)
  • 《能登支援》和傘製作講座(4回コース)

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