金沢に息づくおもたせの風習。あんこがおいしい街角の和菓子屋さんを訪ねて
金沢には昔ながらの風習が息づいています。そのひとつが、友人や仕事先を訪ねる際にお気に入りのお菓子を携えていくことです。今回は、地域で長く愛される街角の和菓子店から、おもたせに人気のあんこ菓子や名物菓子をご紹介します。ぜひ、地元で支持される味を訪ねてみてください。
ライター:河原 剛 金沢スタイル編集部
「なかざき生菓子店」の『えんどう餅』
金沢駅から歩いて約15分、閑静な住宅街に佇む昔ながらの生菓子店。農業の収穫時期や市場への卸売りで賑わった時代には、1日1000個以上販売されていた名物「えんどう餅」が、今も変わらぬ人気を誇っている。どら焼きをはじめ、三代目の店主によるアレンジが光る逸品も見逃せない。
〇えんどう餅
石川県産の餅米を使用した生地は石臼でしっかりと搗きあげることでコシがありながらもやわらかい食感。生あんと甜菜糖のみで砂糖の割りは極限まで抑えたこしあんは、舌ざわりがやさしく、さらりとした口当たり。餅に仕込んだ能登塩が餅の風味を際立たせ、2個、3個と手が出る。
〇草餅
豆大福に勝るとも劣らず、多くの人に愛される草餅。やわらかな餅は草の香りが広がり、自家製の粒あんが上品な甘さとほのかな塩味で絶妙に調和。一口ごとに幸せな気分に包まれる。
〇栗どら焼き
自家製のしっとり香ばしく焼き上げた皮に粒あんと大ぶりの栗を丸ごとサンド。他にもショウガや小松菜を使ったユニークなどら焼きを季節限定で提供している。
〇わらび餅
北海道産の小豆で炊き上げたなめらかなこしあんをプルプルのわらび餅で包み、地元オーガニックファーム「金沢大地」の有機きなこを焙煎してまぶした逸品。冷やして食べるのもおすすめ。
なかざき生菓子店
金沢市瓢箪町12-45
TEL:076-221-5554
営業時間:7:00~18:00
定休日:水曜、日曜
「御菓子司 つば屋」の『きんつば』
もともとパンときんつばを販売する店として営業していたが、1959年に和菓子専門店に改業。現在は3代目の店主が営んでおり、季節の伝統的な生菓子をはじめ、東京の人気店で培った独創性を生かした和菓子が店内に並ぶ。子どもから年配の方まで、和菓子の既成概念を超える商品で新しい和菓子ファンを増やしている。
〇きんつば
店名の由来となった名物「きんつば」の復刻版。ファンの要望に応えて提供を再開した。看板商品として親しまれてきた伝統の製法を守り、一つひとつ丁寧に手作業で焼き上げている。小豆本来のほくほくとした食感がどこか懐かしさを感じさせる。
〇酒まんじゅう
氷室万頭の時期には3万個以上を販売する人気商品。製パンの発想を生かした独自の製法により、ふわもち食感を実現。皮に使用する砂糖は一般的な量の半分程度に抑えている。甜菜糖を使ったこしあんは深みのある甘さが特徴で上品な味わいが堪能できる。
〇和リトッツォ
どら焼きの生地の上に粒あんをたっぷりと載せ、その上に豆乳クリームをふんだんに絞り、地元の旬のフルーツを詰め込んだ和洋折衷の生菓子。上からどら焼きの生地でやさしく押えると、豆乳クリームがはみださんばかりのボリューム。フルーツのみずみずしさと爽やかな後味がクセになる。
御菓子司 つば屋
金沢市松村5-1
TEL:076-268-2718
営業時間:8:30~18:00、水曜~12:00
定休日:木曜
「おくの菓子舗」の『おはぎ』
創業から100年の伝統を受け継ぐ一軒。かつては上生菓子を専門にしていたが、戦後は餅菓子を中心に扱うようになり、現在はひがし茶屋街から歩いて約10分の本店と近江町市場に店を構える。地元の和菓子好きや市場関係者が毎朝搗きたての餅を使用した生菓子を求めて訪れている。
〇おはぎ
石川県産のつるぎ鳥越産かぐらもちを半搗きにした、ふっくらとした食感が魅力。上質な白ザラ糖を使った粒あん、黒ゴマ、白ゴマの3種類が揃いどれも絶品。大ぶりなサイズは食べる人への心遣いが感じられるうれしい特徴。ゴマおはぎの中にも粒あんが入っていて食べ応え十分。
〇六方焼き
しっとりとしたほのかな甘さの生地とこしあんのシンプルな組み合わせのお菓子。香ばしいゴマの風味が引き立ち、味わいに奥行きを与えている。日持ちが良いため、ちょっとした贈り物にも重宝される一品。
〇あべ川餅
同店の代表的なお菓子のひとつである『あべ川餅』は、自慢の餅が弾力に富み、こしが強く、歯切れも良いのが特徴。自然な甘さのきな粉がたっぷりとまぶされており、餅との相性も抜群。舟皿に乗った1人前と、一般的な四角い形状のものがある。
おくの菓子舗
本店
金沢市元町1-1-16
TEL: 076-252-2742
営業時間: 7:30~18:30
定休日:水曜、第1・3日曜
近江町店
金沢市下堤町19
TEL:076-261-6805
営業時間:9:30~16:30
定休日:水曜、日曜、祝日
https://www.instagram.com/okunomochi/
「御菓子司 水本」の『どら巻き』
金沢の茶人に支持される上生菓子の店。季節の生菓子をはじめ、能登大納言を使用した最中、洋菓子の技術を生かした和洋折衷の菓子など、幅広い商品が揃う。珍しい駄菓子や袋菓子なども取り扱っており地域の人々の憩いの場となっている。
〇どら巻き
銅板で一枚一枚手焼きした生地に上質な自家製あんを巻き込んだ和風ロールケーキ。濃厚なあんこがほんのり塩っ気のある生地にマッチしてあっさりとした風味。1日経つとあんこと生地がなじんでより深みのある味わいに。
〇大納言もなか
長年愛される最中。厳選した大納言小豆を使用し、薄めの最中の皮にたっぷりと挟み込んである。パリっと香ばしい皮の風味に小豆本来の旨味が生かされた粒あんが調和している。
〇上生菓子
見た目の美しさや季節を丁寧に表現した上生菓子。茶の湯文化が盛んな金沢で同店の上生菓子は茶人から高い支持を集めている。店内にも常時数種類並んでいるので、気軽に買い求めたい。
〇菜の花が
オレンジの果汁とコアントローが入ったケーキ。ブランデーケーキのような芳醇な香りが味わえる。40年来のロングセラー。
御菓子司 水本
金沢市暁町14-3
TEL:076-261-6646
営業時間:8:30~18:00
定休日:月曜
「御菓子処 美福」の『草だんご』
学生街の一角にある地域に根差した和菓子店。2代目の店主が洋菓子店での修業経験を生かし、伝統に捉われない豊かな発想を生かしたお菓子を提供。看板の団子からチョコあん入りのハートどら焼きまで多彩な品揃えで若い世代に人気を博している。
〇草だんご
北海道十勝産の小豆をふっくらと炊きあげ、みずみずしく上品な甘さに仕上げたあんこが自慢。新鮮な草の香りがほのかに漂う団子の素朴な風味が味わえる。
〇おはぎ(粒あん、きなこ)
北海道十勝産の小豆を使用した粒あんは小豆本来の風味となめらかな舌触りが絶妙。上質なあんこに包まれているのは国産の厳選されたもち米で、ふっくらとしたもちもちの食感を楽しめる。
〇五郎島金時おはぎ ※金沢エムザ店限定
加賀野菜の五郎島金時のあんこを包んだ珍しいおはぎ。さつまいもの素朴な甘さを生かしたやさしい味わいに心がほっこり和む。小豆あんが苦手な人にもおすすめ。
〇ミニどら
国産小麦粉と新鮮な卵をたっぷり使って焼き上げた皮が自慢。「ざくざくアーモンド」「十勝あずき&クリームチーズ」「クリームチーズ」など、和洋の素材を使ったフレーバーが揃う。
〇みたらし団子
同店名物のみたらし団子は、地元大野醤油を使用したサラリとしたタレが自慢。団子はその日の気温や湿度によって水加減や時間を変えながら作り、もっちりやわらかな食感にこだわっている。
御菓子処 美福
本店:石川県金沢市旭町3-6-10
TEL: 076-222-0329
営業時間:8:00~19:00
定休日:年中無休(元日を除く)
金沢エムザ店:石川県金沢市武蔵町15−1
TEL:076-260-2092
営業時間:10:00-19:30
定休日:金沢エムザに準ずる
「御菓子処 みずの」の『アンドーナツ』
金沢駅から徒歩約3分。明治元年に創業以来、地元客、駅を利用する人、観光客と多くの人に親しまれる一軒。半世紀愛されるロングセラー「アンドーナツ」をはじめ、6代目の主人が手掛ける伝統的な製法と厳選の素材で作る体にやさしいお菓子が幅広く支持されている。
〇アンドーナツ
添加物不使用。生地は小麦粉、卵、バター、砂糖とシンプルな材料を使い、米油でサクッと揚げてあり、クセがなく後味すっきり。北海道産の小豆を使った自家製こしあんは白ザラ糖を使用したキレのあるあっさりとした味わい。
〇酒まんじゅう
酒粕から丹精込めて起こした酒種に秘伝の配合の材料を合わせた生地はしっとりとした食感と奥深い香り。上品に仕上げられたこしあんとの見事な調和に、出張帰りに通い詰めるビジネスパーソンをはじめ、土産に買い求める客が後を絶たない。
〇あやめ団子
先々代が考案し、代々受け継がれる品。もろみが強めの濃口醤油に砂糖を利かせた自家製タレが自慢。団子は蒸し上げた後に一度冷水に浸し、再度蒸し上げる手間をかけ、もちもちの食感と歯切れの良さを両立させている。
御菓子処 みずの
石川県金沢市昭和町13-5
TEL:076-231-7137
営業時間:9:00〜18:30
定休日:日曜日