曲水の名勝「兼六園」効率よい回り方と見どころ

遡ること350年近く前、金沢城の外庭として作られた前田家ゆかりの「兼六園」は、岡山の「後楽園」や水戸の「偕楽園」と並ぶ日本三名園の一つとして特別名勝に指定されています。 3万坪の大名庭園を目当てに、近年は交通アクセスの充実で海外観光客も増加の一途!この記事は、今や世界に誇る「兼六園」の楽しみ方をまんべんなく散りばめた備忘録のようなものです。

開かれし7つの門、あなたはどこから?

  • 利用客が最も多い「桂坂口(かつらざかぐち)」

  • もともとの正門となる「蓮池門口(れんちもんぐち)」

  • 片町などの繁華街や金沢21世紀美術館に繋がる「真弓坂口(まゆみざかぐち)」

  • 石川県立美術館や歴史博物館に近い「随身坂口(ずいしんざかぐち)」

  • もっとも高い位置から“下る”「小立野口(こだつのぐち)」は兼六園シャトルバス停「県立美術館・成巽閣」下車。

  • 根上松や卯辰山の眺望からはじまる「上坂口(かみさかぐち)」

  • いきなりメインの「ことじ灯篭」にたどり着ける「桜ヶ岡口(さくらがおかぐち)」

  • 兼六園マップ

所要時間約1時間の“お散歩”でその魅力を堪能できる「兼六園」ですが、その印象は “どこから入るか”でも大きく変わってきます。「兼六園下・金沢城」バス停の最寄りで金沢城と「石川橋」で直結する「桂坂口」と、香林坊・片町などの繁華街や金沢21世紀美術館とのアクセスも良好な「真弓坂口」が“間違いない”とされる定番ルートですが、他5か所の門からはじまる“別ルート”もきっちり抑えておけば、より効率のよい観光が楽しめます。

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観光ガイドもおススメ!混雑回避の裏コース

大小7つの入場口を構える「兼六園」ですが、下り坂メイン&バリアフリーでラクラク回遊できる「小立野口」からのルートは、ガイドも密かに推す “脱混雑”コースです。しかもここからだと、兼六園の水の恵みの源であり、NHK「ブラタモリ」でもそのレア度が再確認された“日本三大用水”のひとつ「辰巳用水」の流れに沿って“曲水の庭”を巡れるんです。入口からいきなり「山崎山」なので、紅葉シーズンは特にオススメ!

桜、紅葉、雪吊り…季節感が映える “六勝”の庭!

  • 「山崎山」の紅葉は高台からではなく見上げながら歩くのがおススメ

  • 選ばれし6人の庭師による雪吊り作業は11月1日から

  • 紅葉と雪吊りを照らす秋のおわりのライトアップも幻想的

  • うっすら雪が降り積もれば本格的な冬の始まり。空気が澄んで景色にさらなる奥行きが

  • 桜の満開に合わせて庭園は無料開園となり、夜はライトアップで別世界に

  • 黄金に輝く雪吊りのライトアップは冬のハイライト

  • 園内の一角にある「梅林」は地元民が待ちわびる早春の風物詩

  • 季節に応じ、視界に贅沢な彩りをもらたす曲水の庭園

  • 初夏にかけて、カキツバタとツツジ、サツキが曲水を彩る

  • 滝壺のない「翠滝(みどりたき)」は涼感に溢れたパワースポットは夏も快適

明るく開放的な「宏大(こうだい)」さに静寂で奥深い「幽邃(ゆうすい)」の趣きを重ね、「人力(じんりょく)」で拓きながらも「蒼古(そうこ)」な自然を守り、川や池などの潤沢な「水泉」と高台ならではの「眺望」を活かす…『兼六園』は、古来より“すぐれた景観”の指標とされてきた「六勝」を満たす激レアな大名庭園です。金沢城の防災用に造られた「辰巳用水」の水を使って、庭の中に渓流、曲水、池、滝などさまざまな水の景色をつくり、四季を彩る花や木々を配置した作庭の妙は、歴代前田家藩主の美意識と遊び心が溢れ、今の平穏な世へと繋がってきた時代の“流れ”をも感じ取ることができます。

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早朝や夜のライトアップで、季節の趣きをより身近に!

通常開園時間(季節によって7:00~か8:00~)の15分前までの早朝は年中無料開放となる「兼六園」は、4月頭から8月末までは4:00からという超早朝入園が可能で、涼やかな空気の中、水面を朝焼けが照らす絶景をゆったり拝むことができます。桜の時期、春(GW)、金沢百万石まつり開催期間、夏(お盆を含めた8月)、秋(11月中)、冬(2月)にはライトアップも。いったん閉園した後の点灯なので、早朝同様、入園料が無料!こちらもチェックを。

水と緑に包まれる大名庭園で、ナチュラルな非日常を

  • 霞が池との高低差で吹き上がる噴水は、江戸時代後期に造られた日本最古のもの

  • 琴に見立てた2本脚が珍しい「ことじ灯篭」は「兼六園」の顔

  • 霞が池にかかる「唐崎松」は鶴をイメージした大黒松

  • 島全体で亀を模している霞が池の「蓬莱島」は、向かい合う「唐崎松」とワンセットの縁起物

  • 盛り土を堀り起こし、2メートル分の足元をあらわにした「根上松」も時の藩主のお戯れ

  • 展望台などに上らずとも拝める卯辰山とそのふもとの街並みで大名気分に

  • 七つの自然石で神々を模した「七福神山」

  • 内で最も古い時代に作庭された「瓢池(ひさごいけ)」は兼六園の原点

  • 金城霊澤

兼六園ガイドツアーの「六勝コース」にお好みのアレンジを加え、自然と調和したフリースタイルの庭園散策を楽しめる「兼六園」。「唐崎松」や「根上松」などを筆頭とする8000本超えの木々や歴史的建造物も見ものですが、兼六園ならではの醍醐味と言えばやはり「水」の恵みです。”日本最古の噴水”や”滝つぼのない滝”など曲水の美を巡り、まさに心洗われるひとときを堪能できます。

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明治時代建立の日本武尊像にハトが止まらない理由

「根上松」が目の前にあり、卯辰山の眺望を背にするヤマトタケルノミコトの巨大銅像は、石川から西南戦争に派遣された兵への慰霊碑で、明治時代に建てられたもので前田家との関連は一切ない”別枠”の名物。ハトが寄り付かず、糞害がなかった不思議から時の大学教授が銅の成分を調べ、「ヒ素」の効果によるものと発表した研究が、世界的珍研究の最高峰となる「イグノーベル賞」を受賞したというエピソードは、ちょっとした豆知識に最適です。

“腰かけ”スポットもフル活用し、“歩き方”改革を!

  • 桜花期ライトアップの茶店通り

  • 茶店通り

  • 霞ヶ池を掘り起こした際の土で盛り上げた栄螺山(さざえやま)で一息 ※2024年11月現在、栄螺山の内部は立入禁止(周囲から見ることは可能)

  • 霞ヶ池のほとりに立つ「内橋亭」では水面越しの庭園の風景を独り占めできる

  • 瓢池のほとりで翠滝の音を楽しむ「三芳庵」

  • 和モダンなフロアでくつろぐ「蓬萊堂(ほうらいどう )」では「最中アイス」など金沢らしいスイーツが続々と

  • 隈研吾氏のプロデュースで生まれ変わった「見城亭」など”新しさ”も取り入れつつ…

園内にはゆっくり“六勝”に酔いしれるための休憩スポットがたくさんあります。「桂坂口」から「蓮池門口」までの通りは、2代将軍徳川秀忠の娘である珠姫の輿入れの際、江戸から300人ものお供が移り住み、「江戸町」と呼ばれました。今は茶店が軒を並べる通りとなっていて、園内と合わせて12軒の茶店が観光客のお休み処として営業しています。自家製のお団子などのスイーツや、郷土料理の「治部煮」から本格的な加賀料理まで、金沢ならではの情緒を、大名庭園の贅沢な空気感の中で満喫しましょう。

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園内にチェーン飲食店が進出しない理由

明治7年に一般開放された「兼六園」ですが、一時期には50軒以上の茶屋が競う“乱立期”もあったのだそう。これは当時、公園の管理を任された石川県に必要な維持費が不足していて、管理人の兼務を条件に茶店の出店を奨励したことが要因でした。その後、景観や風紀を乱す店が排除され、残った12軒が、県の審査を受けながら代々屋号を受け継いでいます。現在は、十分な管理費と専属の庭師らによって“特別名勝”ならではの風格ある景観が守られており、茶店の店主らもその趣きを重んじた店づくりを心がけています。

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