金沢旅物語

はじめに、人力車の特徴や魅力について教えてください。

人力車は明治時代、日本で発明されたと言われています。観光人力車が始まったのは昭和の終わり頃だそうです。実際に乗ってみると分かるのですが、人力車は車輪の直径が1メートルあるので車高が高く、車よりも目線が高くなるのが特徴です。人力車に乗って街を移動していると注目を集めますし、眺める景色も特別で非日常感を味わえるのが特徴です。車よりも遅く、歩くよりも早い独特の速度で進みますので、風景を見て楽しむのにもぴったりです。

千田さんはどのようなきっかけで俥夫（しゃふ）になられたのでしょうか。

大学時代のアルバイト経験から自分は接客業に向いていると思い、卒業後は金沢市内の飲食店に就職しました。その後、ワンランク上の接客を学びたくてホテルに転職。金沢市中心部にあるホテルで国内外のお客様をお迎えしました。契機になったのはホテルマン時代、観光で飛騨高山（岐阜県）を訪れた際に初めて人力車に乗ったこと。案内をしてくれた俥夫のお兄さんがとても輝いており、とても印象に残りました。しばらくして金沢で俥夫の求人を見つけて「ぜひ挑戦してみたい」と転職し、今に至ります。

人力車体験のポイントを教えてください。

「金沢観光人力車　浪漫屋」には創業以来10年間で培った経験とノウハウがあります。日々話題のスポットや新しいお店などをチェックし、メンバーで共有してコースのブラッシュアップやアップデートを行っています。ただ歩いているだけでは分からないような小ネタをお伝えしたり、フォトスポットで写真を撮ったりしながらご案内するのがポイントです。

一番人気はひがし茶屋街周辺を巡る「周遊コース」ですが、一時間たっぷりかけて金沢の観光スポットを巡る「60分コース」もおすすめです。ひがし茶屋街をスタート地点として、主計町茶屋街、白鳥路、金沢城、兼六園、金沢21世紀美術館、尾山神社、長町武家屋敷跡または近江町いちばまでご案内するので、ダイジェストで金沢を回りたい方にぴったりの内容となっています。

人力車に乗った方は、シンプルに楽しんでくださるんですよね。お客様の嬉しそうな表情を見たり「乗っていて楽しいです」と感想をいただいたりと直接反応を得られることが多く、とてもやりがいのある仕事です。初めて人力車に乗ったときに感動したような、元気でハツラツとしている憧れの人力車のお兄さんでいられるように、これからも頑張りたいです。

金沢の魅力やおすすめのスポットを教えてください。

日々街なかを走りながら実感しているのですが、金沢は昔からの歴史を感じるスポットが多く、また街のつくりが複雑でユニークですよね。入り組んだ路地も多く、あちこち歩いて回るのにぴったりだと思います。コンパクトなエリアに数え切れないほど多くの魅力が詰まっています。

千田さんにとって「金沢」とは何でしょうか。

生まれ育った場所であり、魅力を発信したくなる街ですかね。地元で人力車を引いて走っていると幼い頃からお世話になっている近所の方から声をかけていただくことも少なくありません。そんなとき、金沢の代表になったような気分で、より多くの方に金沢の魅力を伝えるぞ！という気持ちになります。

金沢観光人力車　浪漫屋　千田健人さん

石川県金沢市出身。大学を卒業後、市内の飲食店を経てホテルマンとして接客を学び、「金沢観光人力車　浪漫屋」に就職。現在は店長として後輩の育成にも励んでいる。