金沢旅物語

金沢をはじめ能登や加賀の自然の魅力を伝える活動をしていらっしゃいます。金沢の自然の特徴や魅力について教えてください。

金沢の自然の特徴は、街の中にこれだけ緑があふれていること。例えば金沢市中心部にも兼六園や本多の森公園など自然を感じられる場所がたくさんあります。金沢の人は昔から自然を大切にしており、武家や町人が自然を身近なものとして庭の手入れを欠かさなかったのも、その表れだと思います。自然があまりに身近にあるので日常的に意識する人は少ないかもしれませんが、これからも大事に残していきたいですよね。

2019年に「TABITAIKEN」を立ち上げました。どのような経緯で自然に関わる仕事を始めたのでしょうか。

小木港がある能登半島の能登町に生まれ、高校卒業まで能登で過ごしました。一度進学と就職で地元を数年間離れ、石川県へUターンしました。子どもが生まれたばかりの頃、我が子のために何を残してあげられるだろうと考えたときに、ふと幼い頃に祖母から教えてもらったいろんなことを思い出したんです。それは近くの山で山菜を採ったり海で貝や海藻を獲ったりといった、自然が身近にあり、生きるための知恵と遊びが一緒になった暮らしでした。振り返るととても楽しく、ぜひ子どもに体験として残してあげたいと思ったんです。

ちょうど同じ時期に石川県が「いしかわ自然学校」を開講すると知り、自然体験の企画者養成講座を受講することに。2000年から企画者として活動をスタートし、2003年にはインストラクタースクールのコーディネーターとしての活動も始めました。「いしかわ自然学校」は県民向けのプログラムがメインだったので、県外から訪れる人にもぜひ石川県の自然に触れていただきたいという思いから、2019年に「TABITAIKEN」を立ち上げました。

「TABITAIKEN」でできる体験のポイントを教えてください。

屋号に「体験」という言葉を使っているのは、インターネットで調べた情報ではなく実際の体験を大切にしてもらいたいという思いから。プログラムでは自然、人、文化の3つに触れることを大切にしています。登山やトレッキングのような雄大な自然体験だけでなく、近くの森を歩いたり街巡りをしたりするといった、足元にある自然やそこで暮らす人々にも目を向けるような体験まで幅広く揃っているので、ぜひそのときの気分に合ったものを選んでいただければと思います。

体験に参加される方は「疲れているから自然に癒されたい」という方から「家族で特別な体験をしてみたい」という方までさまざま。実際に体験をした方が身近な自然の面白さに気付いたり、心の底からの笑顔を見せてくれたりしたときが一番嬉しいですね。参加者を案内するなかで大切にしているのは、自らが発見すること。発見は気付きとも言えます。発見すると嬉しいですし、気付きは心に潤いを与えてくれます。発見をしたら、自分のなかでの喜びを一緒に参加したメンバーとシェアすることでより一層楽しくなりますよ。

金沢の魅力やおすすめスポットを教えてください。

街なかにいながら自然を感じられる「本多の森公園」がお気に入りです。かつて加賀藩の筆頭家老だった本多家の屋敷があったことから「本多の森公園」と名付けられているのですが、「石川県立美術館広坂別館」の裏あたりにある立派な木が密集しているスポットはぜひ訪れていただきたいですね。あれだけ大きい木を間近にすると人って本当にちっぽけな存在なんだと思えて、悩み事や不安も少なくなりますよ。

越石さんにとって、金沢とは何でしょうか。

自分を整えてくれる場所です。ここにある自然、親しくしている友達、関わってくれる人、すべてが自分の支えになっています。

TABITAIKENネット　代表　越石あきこさん

能登海と森をあそび場として育つ。自然を学び、健やかに、私が私らしく暮らすことを日々実践中。いしかわ自然学校インストラクタースクール主任講師。いしかわ自然学校で人材育成に取り組み、石川の自然大好き仲間のネットワークが宝物。現在は金沢と能登の二拠点暮らし。ほっと石川観光マイスター、自然体験活動推進協議会トレーナー、全国体験活動指導者認定委員会主任講師、自然体験コーディネーター、夕日寺自然体験実行委員会代表、workshopおゝぎの番や／グリーンキーパーズ