水引作家 津田六佑  KANAZAWA EXPERT #3

「KANAZAWA EXPERT」は、昔からの文化が息づく街・金沢で、伝統の技や金沢の歴史・文化を訪れる人たちに発信している作家や職人、その道のプロフェッショナルたちをご紹介する企画です。金沢を熟知する案内人でもある方々に、ここでしかできない体験や金沢の楽しみ方をお聞きします。今回は100年以上の歴史を持つ水引細工発祥の老舗『津田水引折型』五代目・津田六佑さんに話をお聞きしました。

美しい水引細工に思いを込める

立体的な水引細工・折型が特徴的な、加賀水引。その歴史と特徴について教えてください。


初代である津田左右吉がそれまで平面的だった結納や祝儀袋の紙の折型を立体的に仕上げ、水引の紐細工を造形的な結びに進化させました。芸術の域に昇華した水引は芸術分野で高い評価を受け、皇室献上など数々の栄誉を受けました。そして二代目・津田梅の代にこの作風が「希少伝統工芸加賀水引細工」として確立しました。約100年経った現在でも初代の考案した折型や水引細工をベースとして、結納品や祝儀袋に用いて製作を行っているんですよ。


津田さんがこの道に進まれたきっかけを教えてください。


工業大学を卒業後、ウェブ制作やデザイン・コーディング、ネットショップの仕事などを経験して、北陸新幹線金沢開業を控えた2014年から家業を手伝い始めました。幼い頃から祖父母の家や店舗へ遊びに行くたびに水引を目にしていましたが、実際に作った経験はなく、働き始めて初めて基本を学びました。もともと手を動かしたり何かを作ったりするのが好きだったので向いていたというのもありますが、いち早く水引の本質に気付いたということが、この道を志す上で自分にとって大きな出来事でした。現在は宿泊施設から依頼を受けて一点ものを手がけたり、インスタレーションの制作や新ブランドの立ち上げを行ったりしています。


水引の魅力、本質とは何でしょうか。


水引は簡単に言えばラッピングです。品物を和紙で包み、その上からさらに水引で包み、贈る人の気持ちを筆で書いて添える。飾りとしても十分美しいですが、自分が素晴らしいと思うのは、品物を美しく包装して贈ることにより、その人の気持ちを間接的に伝えられるところです。日本ならではの奥ゆかしい文化ですし、クールですよね。


お客様のなかには「本当に大切な人に渡したいので、ぜひ津田さんの水引で」とおっしゃっていただく方もいます。結婚祝いにお金を包むにしても、素敵な祝儀袋に包むことで気持ちの伝わり方が違う。一つひとつ手作りした水引を飾り、筆で手書きをすることで多くの思いを伝えられるツールだと考えています。

好きな色の紐を組み合わせて、
かわいい水引グッズづくり

  • アクセサリーブランド「knot(ノット)」シリーズ

  • 2024年にスタートした「#000 ブラック工芸」シリーズ

水引細工体験が大好評とのこと。体験の魅力やポイントを教えてください。


カラーバリエーションが50色ほどある紐の中から好きな色4〜6本を選んでいただき、花(梅)の形の水引細工を作っていただきます。一番人気は水引チャーム(キーホルダー)ですが、アクセサリー類も好評ですね。基本の「あわじ結び」を応用して花を作るのですが、紐の本数を増減したり大きさを調整したりすることで、無限のアレンジができます。


「思っていたよりも難しい」という声が多いですが、その分仕上がったときの喜びが大きく、完成した商品をパッケージに入れてお渡しすると歓声が上がります。その他、のし袋やポチ袋作り体験、冬季にはしめ飾り作り体験も行っていますよ。


体験をして水引に親しんだ後は、店内の至るところに飾られている歴代の作品を見る目が少し変わっているかも知れません。また、僕の代で立ち上げたアクセサリーブランド「knot(ノット)」や祝儀袋ブランド「wrap(ラップ)」、2024年にスタートしたばかりの「#000 ブラック工芸」もぜひ手にとってご覧いただけばと思います。

金沢市中心部を流れる犀川は
散歩にもサイクリングにもおすすめ

  • 犀川河畔は桜の名所

  • 津田水引折型のそばにかかる「犀川大橋」の夕景

金沢の魅力や、津田さんおすすめのスポットを教えてください。


店から少し歩いたところにある犀川ですね。幼い頃から親しんでいて、子どものときは川沿いを自転車で走って海まで行ったこともあります。両岸には遊歩道が整備されていて芝生も敷き詰められているので歩いても気持ちがいいですし、春には桜を眺めることもできますよ。


津田さんにとって「金沢」とは何でしょうか。


帰ってくるとホッとする場所ですかね。旅行で県外へ出かけたり出張から戻ってきたりすると、日常に戻ってきた感じがして落ち着きます。とくに金沢市中心部のクセのある信号と狭い道路を見ると、金沢に帰ってきたなって感じがしますね(笑)


津田水引折型 五代目 津田六佑さん

立体的な水引細工・折型の創始者である津田左右吉氏(加賀水引 初代)の玄孫。工業大学を卒業後、インターネット関連企業に10年勤務し、2014年から5代目として家業を継ぐ。2015年、CSディスカバリーチャンネル「明日への扉」出演、2016年、JT(日本たばこ産業)TVコマーシャル水引篇のアート作品制作・監修、石川県立伝統産業工芸館にて加賀水引展を開催、三越伊勢丹でオリジナル商品開発販売・アート作品展開。2018年、金沢市工芸展入選。2019年、「TAKUMI CRAFT CONNECTION -KYOTO by LEXUS NEW TAKUMI PROJECT KYOTO connection」にてインスタレーション展示。水引アクセサリーブランド「knot(ノット)」、祝儀袋ブランド「wrap(ラップ)」、「#000 ブラック工芸」展開。

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