ボランティアガイドが案内する金沢の定番観光スポット④「寺町寺院群」
寺町寺院群は「犀川」西側に位置し、その街並みや風景は、「浅野川」東側の「ひがし茶屋街」との比で「男性的」とも例えられます。「西茶屋資料館」で合流した纓田(おだ)千恵子さんは四半世紀のボランティアガイド歴を持ち、「金石(かないわ)地区」のスペシャリストとしても有名な「まいどさん」ですが、最近はこの「寺町」界隈の、素朴な面白味をいかに伝えるかにやりがいを感じているのだとか。実際、纓田さんの「好奇心」から得た情報を基にしたコース取り、スポット紹介には、「意外な発見」が詰まっていました。
※「まいどさん」は「こんにちは」に近い意味を持つ金沢弁です。
(文・写真/橋詰晋也)
掘れば掘るほど止まらない、寺院探索!
「西茶屋資料館」の裏路地からバス通りを渡ると、あっという間に「忍者寺」こと「妙立寺」の裏通りに到着。多くの寺院が日常に溶け込む「寺町」界隈ですが、観光的な知名度に関わらず、寺ごとの特色やエピソードは様々で、ここは纓田さんが仕入れた現地情報や話術、着眼点の見せ所です。ちなみに、纓田さんの“推し”寺は「三光寺」。かつての日本の初代内務卿・大久保利通の暗殺を首謀したメンバーが集会を行った場所として有名な寺院ですが、現在は石の「仁王門」の制作などで“再建”に尽力した彫刻家が住職を務めており、像の芸術性や「水琴窟」の涼やかな音色が楽しめるスポットとして、おススメとしています。他、前田利長夫人(玉泉院)ゆかりの「玉泉寺」、明治時代の大火で焼失した「玉泉寺天満宮」の境内に氏子が建てたという「泉野菅原神社」など、重厚な歴史的背景がありながらも静かに佇む寺院も数多く、個人での深掘りには相当の時間を要します。また、道も不規則で迷いやすいため、案内役がいる有難みは増すばかりです。
一見、観光的でなさそうな閑静なエリアも魅力的
そして次は、「墓所」が隣り合う寺院群へと進みます。かつての地元では「霊的な雰囲気が漂う」との口伝もあったという閑静なエリアですが、時代の流れと共に整備され、現在は森林から響く鳥のさえずりに癒されるスポットとなっています。さらにこの小路の末端には、国内では珍しいフレスコ壁画「釈尊伝」を据える「本長寺」、金沢城稲荷屋敷に安置されていた「稲荷社」が知られる「眞長寺」など特色豊かな名所が多く、観光地としての見どころも多いです。
犀川・片町への景色も開く、2つの坂
寺院群を抜け、寺町通りを横切って片町方面へ進むと、自然とゆるやかな下り坂「蛤坂(はまぐりざか)」に突入します。この坂は元々、入口付近に構える寺院名が由来の「妙慶寺坂」が正式名称でした。しかし、住民らが水害によって通れなくなった道の整備を訴えるも叶わず、大火によって整備が実現した出来事を受け、“熱を加えると開く”「蛤(はまぐり)」に例えた愛称が付き、後に正式名称に昇格したのだそうです。「蛤坂」がさらに“開いた” 犀川の上流方向へ下る坂は「かいわれ坂」と名付けられました。纓田さんは、この粋なネーミングセンスも金沢ならではと笑います。ちなみに、2つの坂の合流地点からは「犀川大橋」も一望できました。
ラストは、寺町と繁華街片町を結ぶ「犀川大橋」
前田利家が架けた木製にはじまり、約100年前(1924年)に現在の鋼材型に作り直された「犀川大橋」。関東大震災による材料不足から、最小限の部品点数で強度を保てるよう、イギリス製鋼材を使用した「ワーレントラス」式を採用したのだそうです。さらに約30年前(1994年)には「加賀友禅」風の配色を施し、曲線の形状、御影石の歩道、ガス灯をモチーフとした照明灯などの細やかなしつらえと合わせ、より一層、センス良く景観に溶け込んでいます。そんな橋から眺める加賀冨士と呼ばれる大門山などの山々は、日中から夕刻まで飽きない美しさで、春の桜並木はさらに見もの。そして纓田さんは「片町(かたまち)」に向かう前に、名作を残した室生犀星ゆかりの寺院にある、全国でも希少な「迷子石」を見てほしいと「雨宝院」へ軽く寄り道。終わってみれば、寺に始まり寺に終わる、迷路を巡ったような達成感にも満たされる寺町散策でした。
Column
ボランティアガイドを頼むには
「西茶屋資料館」にはボランティアガイド「まいどさん」が常駐し観光案内をしています。少人数のグループにかぎり予約なしでも界隈をご案内いたします。
「西茶屋資料館」
開館時間:9:30~17:00
案内時間のめやす:30~60分 *お客様のご要望に応じます。
紹介したスポットをマップで見る
- 金沢市西茶屋資料館
- 妙立寺
- 玉泉寺
- 本長寺
- 眞長寺
- 雨宝院
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