ボランティアガイドが案内する金沢の定番観光スポット②「ひがし茶屋街」
人気スポット「ひがし茶屋街」の観光案内所「ひがし茶屋休憩館」にはボランティアガイド「まいどさん」が常駐し、界隈を案内してくれます。同館で合流した周田重孝さん(写真中央)は、市内で飲食店を経営しながら40代半ばにまいどさんデビューを果たしたキャリア16年の若き大ベテラン!戦火を免れた金沢の中でも「いい意味で時代に取り残された」と例えるエリアの魅力を、広い視野からじっくり紹介してもらい、しっかり歩きながら味わいきりました。
※「まいどさん」は「こんにちは」に近い意味を持つ金沢弁です。
(文・写真/橋詰晋也)
まずは路地裏から暮らしぶりを見る、茶屋街巡りを
周田さんのコース取りは、賑やかなメインストリートを “歩きすぎない”路地巡りから。茶屋の中から外が見え、外から中は見えにくい機能性にデザイン性を加えた格子窓「きむすこ」のほか、屋根から飛び出す松の木、はしごの木材を再利用した屋根雪対策の壁掛けスコップ、「まめに働く」や「ふさふさと儲かる」といったゲン担ぎで各軒先にとうもろこしを飾る「門守(かどもり)」など、観光客が“気になる”ポイントを暮らし目線を交えながら紐解いていきます。
町の神社の成り立ちも、狛犬の立ち姿もそれぞれ
メインストリートを少し離れた閑静なエリアでは、芸妓たちの鎮守の神として菅原道真を祀った「菅原神社」と、前田利家の神霊が祀られ、芸妓による節分祭の豆まきも有名な「宇多須神社」が隣り合っています。近年更新された「菅原神社」の小ぶりな狛犬、市内数カ所でしか見られない「宇多須神社」の“逆立ち”の狛犬なども見どころで、周田さんが語る界隈の歴史背景も踏まえながら各ポイントを抑えていくと、華やかな「ひがし茶屋街」の別の一面、奥行きが見えてきます。
優雅な茶屋街巡りから絶景の仏閣巡り、坂道ルートには達成感も大アリ!
そしてコースは、優雅な茶屋街巡りから卯辰山に向かう坂道ルートに。北大路魯山人が料理に開眼し、料理の手ほどきを受けたという料亭「山乃尾」の前を通り、「子来坂」を上っていく順序ですが、一連の坂道は自動車がギリギリ走行可能な15度の傾斜で、けっこういい運動になります。今回、位置的にも“最高”の目的地となる「宝泉寺」は、「金沢城」の鬼門に当たる向山(卯辰山)の中腹に位置し、前田利家の守本尊「摩利支天」を祀っています。また、泉鏡花の小説の舞台となった「五本松」にも出会えます。日本文学研究家のドナルド・キーン氏も絶賛した眺望を堪能した後は、寺社の裏道を進み、「東山蓮如堂」の敷地内に。
山を下れば、民衆の結束に思いを寄せる「観音町」ルートへ
民家の間を通る細い石段から、「上りの場合、振り返ってはいけない」観音坂を下り切ったところで、「七稲地蔵尊」を祀る「寿経寺」へと辿り着きます。稲穂を抱く7体の地蔵は、1858年、米価の高騰に対して民衆2000人が卯辰山の山頂から大声を張り上げて藩主に直訴した「泣き一揆」の首謀者(として名乗りを上げた)7人を表したもので、処罰を受けた7人それぞれの名前を記した石碑も据えられています。そんな東山界隈の歴史を肌で感じながら足を進めると、東京の「御徒町」に倣った旧「御歩町(おかちまち)」の石碑にも遭遇。「徒」の字を「歩」にあえて変えた理由を知った際の納得感も、心地よいものでした。
「浅野川」のせせらぎに架かる、「梅の橋」を渡って現代へ
そして散策ルートもいよいよ最終章、かつて旦那衆がお茶屋に通うために架けたという、歩道専用の「梅の橋」が舞台です。橋の手前には金沢の三文豪の一人となる自然主義作家・徳田秋聲を顕彰する「徳田秋聲記念館」があり、半焼を負いながら飛び火を防ぎ、茶屋街を守った巨大な栂(つが)の木も見所となっています。橋を渡った先には、この橋を舞台とした泉鏡花の出世作「義血侠血」のヒロインの「瀧の白糸」像が。そこから「浅野川大橋」に向かう松並木の涼やかな通りは、かつての繁華街の一角。過去から現代へとフェードアウトしていく“終わり際”にも風情がありました。
Column
ボランティアガイドを頼むには
「ひがし茶屋休憩館」にはボランティアガイド「まいどさん」が常駐し観光案内をしています。
「ひがし茶屋休憩館」
開館時間:9:00~17:00(12月1日~3月15日は9:30~17:00)
案内時間のめやす:30~60分 *お客様のご要望に応じます。
紹介したスポットをマップで見る
- ひがし茶屋休憩館
- 菅原神社
- 宇多須神社
- 山乃尾
- 宝泉寺
- 寿経寺
- 徳田秋聲記念館
- 梅ノ橋
- 浅野川
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