金沢の老舗料亭
加賀百万石の時代より工芸、芸能などさまざまな文化が育まれ、受け継がれてきた歴史あるまち・金沢。そんな金沢のあらゆる文化が凝縮した世界を体験できる場所の一つが料亭です。旬を迎えた地元食材を活かし、料理人の巧みな技を凝らしたお料理だけでなく、趣あるしつらえや庭園、美しい器によるあしらい、心づくしのもてなし——金沢に息づく美意識に触れられる料亭の魅力とともに、利用の仕方や店舗情報をご紹介します。金沢を訪れたら一度は料亭でのお食事を楽しんでみませんか。
*ご紹介は許容人数が多い順となっております。
金沢の料亭とは?
料亭と他の和食料理店との違いは、本格的な日本料理の提供はもとより、調理場と別となった完全個室制であることや、女将や仲居のもてなしが伴うことです。冠婚葬祭、茶会、接待、会合、お食事を楽しみたい方などいろいろな目的で利用されます。伝統的な和風建築の佇まいのほか、季節の花木や雪吊りが愛でられる日本庭園、打ち水された玄関、季節や行事に合わせた掛け軸、由緒ある骨とう品、調度品、生け花にいたるまで、空間の随所にもてなしの心が注がれます。「金沢ことば」や「金沢しぐさ」と呼ばれる細やかな心配りとともに供されるのは、加賀野菜や日本海の幸など地の利を活かした食材を用い、熟練の料理人が仕立てる加賀料理。九谷焼や輪島塗などの伝統工芸品の器が料理を美しく彩ります。金沢の料亭は、金沢を深く知ることができる“文化の集合体”です。
ゲストをお迎えする料亭は、お客様の目的に応じて、料理の準備はもちろん、部屋のしつらえ、仲居のサービスに至るまで様々な準備をします。そのため、直前の予約キャンセル、予定の変更はできるだけ控えるのがマナーです。当日、約束の時間に遅れるような場合も、必ず電話で連絡を。また、ふさわしい服装で出かける、器を丁寧に扱うなど、料亭を心地よく利用するためにもふるまい方も心得ておきたいものです。
料亭ならではのサービスとして、芸妓のお座敷遊びができることがあります。金沢の芸妓は、“一見さんお断り”のしきたりがありますが、料亭を利用される場合には、料亭から手配してもらうことで可能です。(芸妓さんは通常2名以上で利用、料金は別途)
金沢市料理業組合に加盟する15軒の中から、歴史ある建築や庭、茶室など佇まいにも一見の価値がある金沢の老舗料亭8軒をご紹介します。
※許容人数順に掲載しています。
つば甚
前田利家のお抱え鍔師として仕えた鍔家の3代目甚兵衛が宝暦2年(1752)に鍔師の傍ら営んだ小亭・塩梅屋「つば屋」が始まり。藩主はもとより藩内の重臣が訪れ、多くの文人墨客にも愛されました。かの伊藤博文がその眺望に感動し筆にとった「月の間」、山下清画伯がちぎり絵を描いた「松の間」、松尾芭蕉が句会を催した「小春庵」など、部屋ごとに異なる歴史と由緒が堪能できます。この土地でしか味わえない山海の恵みと、百万石の文化によってつくられた加賀料理には創業の頃から変わらぬもてなしの心が込められています。
◆つば甚
金沢市寺町5-1-8
客室数(許容人数)/12室(2名~230名)
TEL:076-241-2181
かなざわ石亭
加賀藩家老の横山男爵の邸宅跡地に、店名の由来でもある石庭を囲むように建てられた日本料理店。地産地消を大切に、みずみずしい加賀野菜や新鮮な旬の地魚を丁寧に調理した加賀料理をはじめ、脂がのった「のどぐろ塩焼き」などの金沢名物料理のおいしさに定評があります。中でも、同料亭が北陸で初めて提供した歴史ある看板料理といえば「しゃぶしゃぶ」です。とりわけ「能登牛しゃぶしゃぶ」は観光客のみならず地元客からも高い人気。特製のポン酢と秘伝のゴマダレとともに、舌の上でとろけるような肉の旨みを堪能できます。
◆かなざわ石亭
金沢市広坂1-9-23
客室数(許容人数)/10室(160名)
TEL:050-3647-0322(予約・問い合わせ)
*テーブルチェックアプリ利用可
金城樓
初代当主の土屋久兵衛が前田対馬守の子孫の邸宅を手に入れ、明治23年に開業。その伝統と様式を今なお守り続け、玄関で迎える金屏風をはじめ、格式ある客室、150年以上変わらぬ趣を残す庭園、調度品の一つ一つにこだわり、日本建築の伝統美が漂う空間が広がります。日本海の幸、珍味、美酒、加賀野菜など、それらの旬を生かした最良の調理法による料理の数々は、代々継承した器類や美術品で供され、五感で楽しみ尽くせます。地元の食材を大切にしながら、伝統的な加賀料理を守りつつ、新たな金沢の食文化の発信にも努めています。
◆金城樓
金沢市橋場町2-23
客室数(許容人数)/6室(宿泊18名・宴会120名)
TEL:076-221-8188
金茶寮
加賀百万石前田家の元家老 横山男爵が建てた別邸を譲り受け、昭和8年に創業。正面玄関で出迎えるのは、樹齢150年の横山家由来の松。「一客一亭」のおもてなしを創業より守り続け、日本国内はもとより世界の賓客をお迎えする「金沢迎賓館」として歴史を重ねてきました。明治末期に建てられた本館に加え、約千坪の庭園に趣の異なる4つの離れが点在。京都の懐石料理の手法に地元の山海の幸を取り入れ、伝統工芸による巧みな器づかいで供する「京の雅と江戸の粋」を融合させた加賀懐石料理は、ゲストの目と舌を喜ばせています。
◆金茶寮
金沢市寺町1-8-50
客室数(許容人数)/5室(2名~100名)
TEL:076-243-212
大友楼
創業は天保元年、加賀藩の御料理方を代々務め、現在でも前田家の料理式や四条流料理を家伝として守り続けています。6室ある客室は100年以上の風格を感じさせ、部屋ごとに趣が異なります。これまで、金沢出身の室生犀星や泉鏡花、吉田健一、司馬遼太郎など文人墨客も多く訪れ、その舌を唸らせてきました。藩政時代から受け継がれる伝統文化を、もてなしの心と美意識を込めた料理を通じて伝えています。料亭内にある築250年の由緒ある茶室「一井庵」は茶寮としてオープン。金沢の茶の湯文化や料亭文化に気軽にふれられます。
◆大友楼
金沢市尾山町2-27
客室数(許容人数)/6室(50名)
TEL:076-221-0305
山乃尾
加賀百万石の城下町の風情が残る、ひがし茶屋街の高台に佇む料理旅館。1890年の創業以来、変わらぬ「一客一亭」のおもてなしの精神でゲストを迎えます。一棟一棟が離れとなった静寂に包まれた空間で四季折々の庭園美を愛でながら堪能するのは伝統の加賀料理。かつて加賀の美味ともてなしに傾倒し、山乃尾をたびたび訪れた北大路魯山人が「持ち味を生かせ」と語った料理の心髄は今なお受け継がれ、北陸の恵まれた食材を季節ごとの滋味に富んだ料理に丹精込めて仕立てます。その至極の味わいは多くの美食家の舌を満たしています。
◆山乃尾
金沢市東山1-31-25
客室数(許容人数)/7室(50名)
TEL:076-252-5171
穂濤
犀川のほとりに佇む、明治末期の邸宅を活かしたミシュラン2つ星の名料亭。数寄屋造りや書院造りの大小6室あるお座敷からは青々と苔むした庭園が愛でられ、とりわけ2階の大広間の窓一面に広がる春の桜の絶景は感嘆ものです。随所に美意識が宿る空間にていただけるのは、旬の食材を吟味し、その持ち味を存分に引き出した料理の数々。美しい器とあしらいで舌と心を魅了します。ゲストの新たな迎え方として別邸「穂濤 離れ」を設け、お昼時、くずし会席料理でお気軽にご利用できます。
◆穂濤(ほなみ)
金沢市清川町3-11
客室数(許容人数)/6室(2~35名)
TEL:076- 243-2288
浅田屋
慶応3年(1867)創業、わずか3室の料亭旅館。数寄屋造りの館内のいたるところに美術品や調度品がさりげなくしつらえられ、手をかけた美しい坪庭が風趣に富んでおり、目を楽しませてくれます。天然鮎、アワビ、能登松茸、香箱カニなど、北陸の食材を使った加賀料理を主軸としながらも産地を限らず、ゲストの嗜好に添った旬の美味を揃えます。食材の良さを最大限に引き出した料理は、骨とう品から現代作家の作品まで一流の伝統工芸品で供されます。心づくしのもてなしとともに、思い出に残る極上の時間を過ごせます。
◆浅田屋
金沢市十間町23
客室数(許容人数)/3室(16名)
TEL:076-231-2228
紹介したスポットをマップで見る
- つば甚
- かなざわ石亭
- 金城樓
- 金沢迎賓館 金茶寮本店
- 料亭 大友楼
- 山乃尾
- 料亭 穂濤
- 料亭旅館 浅田屋
Google Mapの読み込みが1日の上限を超えた場合、正しく表示されない場合がございますので、ご了承ください。