金沢駅の建築美と工芸品を楽しむ!~世界で最も美しい駅の見かた、歩き方~
「世界で最も美しい14駅」に日本で唯一選ばれた金沢駅(米旅行雑誌『トラベル・アンド・レジャー』ウェブ版/2011年)。アルミとガラスで構成された巨大な「もてなしドーム」と、その華やかさをぐっと引き締める木製の「鼓門(つづみもん)」は、そのシンボルです。本記事では、金沢駅の建築美と、金沢駅構内を飾る工芸品をご紹介します。カメラを準備して、日本が世界に誇る美しい駅を見て、歩いて、堪能しましょう!
知れば楽しい!建築の機能美、構造美
「もてなしドーム」は、雨や雪が多い金沢にあって、駅を降りた人に傘を差し出すおもてなしの心を表しています。使用されているガラスは3019枚。正方形のガラスは1枚もなく、精巧なパズルを組み立てるようにドームが形成されているというから驚きです。独特の形状の「鼓門」は、金沢の伝統芸能である能などで使われるつづみをモチーフとしています。鉄骨は使っておらず、集成材を使った木造建築です。らせん状にねじれながら建つ柱の構造美は、近くで見ても離れて眺めても見事です。
★もてなしドームのちょっと深い知識
[形状]半径90メートルの巨大な球の一部を、三味線のバチの形(T字型)に切り出した形状になっています。
[高さ]最大29.5メートルで、9階建てビルと同等です。
[構造]アルミ合金のパイプを三角形に組み立てたアルミトラス構造で、3019枚の強化ガラスと6000本のアルミフレームが使われています。
[強度]180センチの積雪に耐える強度があります。これは過去に記録された金沢の最深積雪です。
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鼓門を撮影するなら夜もおすすめ
どこを切り取っても絵になる金沢駅ですが、他の人とちょっと違う写真が撮りたいなら、鼓門がライトアップされる日没~0:00に訪れるといいでしょう。ねらい目は、19時きっかり、20時きっかりなどの「正時」。2分間だけ加賀五彩をイメージした色に彩られるので、スペシャルな一枚が撮影できます。鼓門のアップも迫力がありますが、駅周辺のホテルの上層階からなら印象的な俯瞰写真が撮れます。
まるでエキナカ美術館!駅を彩る工芸品
コンコースに建つ12対24本の門型柱に工芸プレートをあしらうなど、地元の伝統工芸の技を随所に施した金沢駅は、さながらエキナカ美術館。通路を歩きながら伝統工芸との出合いを楽しんだり、待合室でじっくり作品を鑑賞したり、壁を飾る著名作家の作品を背景に記念撮影をしたり―。美術館にあるような工芸作品を、より身近に楽しむことができます。
【門型柱 工芸作品リスト】
(1)九谷焼/武腰敏昭
(2)木工芸/灰外達夫
(3)輪島塗/ 前史雄
(4)輪島塗/小森邦衞
(5)九谷焼/吉田美統
(6)金沢漆器/中野孝一
(7)山中漆器/川北良造
(8)輪島塗 /三谷吾一
(9)九谷焼 /山岸大成
(10)山中漆器/中嶋虎男
(11)九谷焼 /武腰一憲
(12)珠洲焼 /中山達磨
(13)輪島塗 /田崎昭一郎
(14)九谷焼 /福島武山
(15)九谷焼/中田一於
(16)金沢漆器/清瀬一光
(17)九谷焼/三代 浅蔵五十吉
(18)九谷焼/武腰潤
(19)山中漆器/水上隆志
(20)九谷焼/四代 徳田八十吉
(21)茶の湯釜/十四代 宮﨑寒雉
(22)加賀象嵌/加澤美照
(23)加賀象嵌/中川衛
(24)銅鑼/三代 魚住為楽
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現代アートのオブジェも
金沢市は工芸だけでなく、現代アートにも力を入れており、まちのあちこちに彫刻やオブジェがあります。
金沢駅では「兼六園口」を出て左手、金沢フォーラスへ向かう途中にある『やかん体、転倒する。』が有名。「金沢・まちなか彫刻作品・国際コンペティション2006」の最優秀賞作品で、分かりやすい待ち合わせ場所としても使われています。なお「兼六園口」を出て右手、石川県立音楽堂への途中には『微宇音・微宙オン・微界音』という作品があります。
「兼六園口」と反対側の「金沢港口」を出ると、高さ20メートルのモニュメント『悠颺(ゆうよう)』が目に入ります。金沢の「カ」「ナ」の文字が造形のモチーフになっています。
駅の風景をうるおす「水」に注目
市中を網の目のように用水が走る金沢は「用水のまち」として知られています。用水は金沢駅にも引き込まれており、風景にうるおいと安らぎを添えています。
もてなしドーム内を流れ、滝となって地下広場へと流れ落ちていくのは、兼六園の曲水や広大な池の水源ともなっている辰巳用水の分水です。「金沢港口」エントランスの前に広がる金沢駅西広場では、柿木畠、香林坊などの繁華街を流れる鞍月用水の利用してハス池、スイレン池が設置され、5月にはカルガモの親子の愛らしい姿が人々の目を楽しませています。
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もてなしドームがきれいなのはなぜ?
ハトの「ふん害」は、全国の駅の悩みのタネ。金沢駅では、2015年の北陸新幹線開業時から、鷹匠(たかじょう)が鷹を放ってにらみをきかせ、ハトが居つかないようにしています。放鷹(ほうよう)はハトの行動が活発な4~10月に毎月2回のペースで不定期に実施しており、偶然見ることができればラッキー! 最新の建築技術で建てられた「世界で最も美しい駅」の景観を、放鷹という伝統的な技で守っているのは、興味深いですね。
駅がイベント会場に
毎年6月に開催される金沢最大のイベント「金沢百万石まつり」の目玉である「百万石行列」は、鼓門が起点です。当日は加賀とびによるまとい総ふり、百万石音頭、太鼓演奏など華やかな出発式が行われ、行列が出発します。
このほかにも、クラシックやジャズなどの演奏イベントが行われたり、「金沢マラソン」のコースの一部になっていたりと、金沢駅はさまざまなイベントを盛り上げる美しき会場ともなっています。